新設法人の急場しのぎ対策リスト

1.各種届出

会社を設立した場合においては、税務署の他、社会保険事務所や事業内容によっては管轄官公庁への届出が必要となります。ここでは税務署及び税務事務所への届出資料を記載しております。

1-1.所轄税務署へ届けましょう。

尚、各種申請書及び記載要領については税務署にて配賦されている他、http://www.taxanser.nta.go.jp/にてダウンロードできます。

1-1-1.青色申告の承認申請書

メリット:赤字を7年間繰り越せる等、税務上優遇されます。必ず期限内に提出しましょう。

ポイント:最初の事業年度終了の日の前日又は、設立の日から3ヶ月を経過した日の前日の何れか早い方の日迄に青色申告の承認申請書を所轄税務署へ提出しましょう。所轄税務署はどちらの税務署でも構わないので電話して本店所在地を伝えると教えてくれます。

1-1-2.法人設立届出書

ポイント:強制提出資料です。期限は設立の日以後2ヶ月以内となっておりますが罰則規定はありません。しかし、青色申告の承認申請書と同時には提出しましょう。

1-1-3.給与支払事務所等の開設/移転/廃止届出書

ポイント:給与を支給した場合における強制提出資料です。期限は給与支払事務を行なう事務所等を設置してから1ヶ月以内でありますが、罰則規定はありません。しかしながら、青色申告の承認申請書と同時には提出しましょう。

1-1-4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書

メリット:会社が給与/役員報酬等について支払する際においては、源泉所得税を控除して預って役員/従業員等へ支払いをし、その預った源泉所得税について翌月10日迄に会社が銀行等で納付をするのが原則です。しかしながら、この届出書を提出した場合においては、1〜6月分を7月10日迄、7〜12月分を翌年1月20日迄に行なえば良い事になります。

メリット:従業員が常時10人未満の会社のみ届出が可能。提出は任意。

1-1-5.消費税課税事業者選択届出書

内容及びメリット:資本金1千万円未満の法人は設立後2年間は消費税を申告しなくて良い免税事業者となります。消費税の申告はお客様から預った消費税(仮受消費税とします)が会社の支払った消費税(仮払消費税とします)より多い場合は、消費税を納付し、逆に少ない場合は消費税が還付されます。よって、免税事業者のままであると、もし課税事業者を選択していれば還付されたであろう消費税を戻してもらえません。よって、そういった会社は当該届出書を提出した方が得なのです。

ポイント:資本金1千万円未満の法人のみ届出可能。設立事業年度末日迄が提出期限となる。提出すべきか否かは検討を要する。

提出の可否の判定方法

一度提出すると設立初年度も含め2〜3期間は課税事業者となりますので、2〜3期間分の課税事業者となった場合の消費税額をシミュレーションします。 各期の消費税の概算額は以下の算式でほぼ求められます。 納税額=仮受消費税-仮払消費税(本則課税方式と言います。1-1-6の説明に出てくるので頭の片隅においといて下さい。)

以下に掲げる仮受/仮払消費税についての説明は相当大雑把なものとなっておりますので、厳密に算定した場合と大きく結果が異なる可能性はあることをご了承下さい。また、仮払消費税及び仮受消費税の試算は各期毎に算定して下さい。

仮払消費税:(給与等の人件費以外の予想費用+土地以外の固定資産(パソコン、建物、自動車等)取得額)x5%

仮受消費税:(予想国内売上+その他物品の販売額(例:営業自動車等の売却等))x5% この算式から判明するように輸出業者や初年度に大きな設備投資や多額の赤字が予想される会社は、多額な消費税が戻ってくる機会を逸していることもあり得ますので注意しましょう。

1-1-6.消費税簡易課税制度選択届出書

内容及びメリット:資本金1千万円以上の法人は強制的に設立初年度より課税事業者となり消費税を申告しなければなりません。申告の結果、還付ではなく納税しなければならない会社の場合、1-1-5.にて前述した本則課税方式による納税額ではなく、本届出をすることによって採用できる簡易課税方式による納税額の方が少額になる場合があります。

ポイント:設立事業年度末日迄が提出期限となります。提出すべきか否かは検討を要します。提出しなければ本則課税により消費税額を算定しなければなりません。

提出の可否の判定方法:一度提出すると設立初年度も含め2〜3期間は簡易課税事業者となりますので、2〜3期間分の本則課税方式での納税額と簡易課税方式での納税額をシミュレーションします。

本則課税方式での納税額の概算は1-1-5.を参照して下さいね。
簡易課税方式による消費税額は以下の算式でほぼ求められます。

納税額=仮受消費税 × みなし仕入率

業種区分
みなし仕入率
卸売業
90%
小売業
80%
製造業、建設業等
70%
不動産業、運輸通信業及びサービス業
50%
飲食業、金融・保険業等 上記以外
60%

1-2.所轄都税事務所等へ届けましょう。

法人設立届出書を本店所在地によって以下のところに提出する必要があります。
東京都23区内:都税事務所
東京都23区外:都税事務所及び市役所
東京外:県税事務所、市役所(尚、政令指定都市(横浜市等)は市役所ではなく区役所へ提出します。

ポイント:明確な提出期限及び罰則規定はありませんが、強制提出資料ですので速やかに提出しましょう。

尚、各種申請書及び記載要領については各届出先にて配賦されております。
東京の場合においては、http://www.tax.metro.tokyo.jp/shomei/index-z.htmにて「都税事務所、県税事務所/市役所等への届出」をクリックして印刷出来ます。

2.会計帳簿の付け方

パソコン用の会計ソフトで十分な性能のものが実売価格5-6万円程度で入手できます。

お勧めは「弥生会計06プロフェッショナル」 定価8万円(実売価格5〜6万円程度と思います)です。但し、会計ソフトがあったとしても、短い勉強時間で全く経理の知識のない人が正しく入力できることは相当困難であると思いますので、公認会計士や税理士等の専門家や経理経験のある方にサポートしてもらった方が良いと思います。その際においてサポートしてもらう方の馴れている会計ソフト等がありますので、どの方にサポートして頂くか決まるまでは購入は止めときましょう

では、サポートして頂く方が決まるまで放置しておいていいかというと、そんなことはありません。資料等が整理されずぐちゃぐちゃになり、時が過ぎると何の支払いだったか忘れる等さかのぼった経理処理が困難になってしまいます。よって、取り敢えず以下のように急場を凌いで下さい。

源泉徴収額は、税務署より毎年送付される「源泉徴収税額表」を見て把握します。 一ヶ月分の給与の支払いを1か月分まとめて支払う場合(=日払等でないという意味です)、「源泉徴収税額表」の「月額表」を見て、賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を見て、源泉徴収額を算定します。

尚、前述の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」を提出後の分に関する預った源泉税の支払いは1〜6月分を7月10日迄、7〜12月分を翌年1月20日迄に行なえば良い事になっておりますので、それ迄に役員の方の役員報酬を決定しなければなりません。役員報酬は一定期間(基本的には1年以上)定額でないと役員賞与として税務上取り扱われ非常に税務上損をしてしまう可能性があります。

そこで、会社の役員報酬以外の売上と費用を想定して利益を予想し、役員報酬額の変動に伴う利益額に基づく法人の税額と役員報酬による個人の所得税等を比較し、節税になるように検討します。ただ、どうしてもこの作業は税金の知識が必要となってしまいますので、知識のある方に相談しましょう。